月舟記録

写真で綴る日々の記憶と記録。

映画「パストライブス」を観た

(ネタバレあります)

「過去」と「現在」、「幼馴染」と「パートナー」、「男」と「女」。
数々の対比を通して、特別な時間の中にある普遍性(あるいはその逆、普遍性の中にある特別さ)を感じさせるものでした。

登場人物同士が互いを見つめる視線は、相手の現在なのか記憶の中の存在に対するものなのか、作品を見直す毎に発見や気づきがありそうなセリフと、ソウルやニューヨークの場所の描写の美しさが印象に残ります。「2人の男性の中で揺れ動く女心」なんてことはなく、恋愛映画というよりも人生について描かれた作品だと感じます。「縁」とかアジア的な考えが出てきて共感しやすい、それがまたアジアにアイデンティティを持ち移民になった主人公のリアリティを強めます。監督の実体験が物語のもとになっている。

登場人物それぞれの行動には共感しかねる部分もありましたが、逆にそのような気持ちになることは物語に引き込まれていたということだとも(ある種の感動)思えます。体験が元になっているだけに、「ちょっと綺麗すぎじゃね」と思うところあり。ただこれは観る側の人生の段階や状況でその都度変わるのだろうなと。あと監督が話していた演出で、画面左側が過去、右側が未来、という考え方(横書き左とじの国の文化的な)で物語が進むので、未来志向なナヨンと過去志向気味のヘソンの動きやカメラのアングルが「ああそういうことか」ともう一度見返したくなる。

ラストシーンでの大泣きするナヨン、車から外を眺めるヘソンの姿は、泣き虫だった彼女と気持ちを伝えきれない彼ら2人の小学生の頃そのままのようでいて、そこからの別れの決意との両方が見え、さらには「過去」「未来」の演出でいうとあっちに動いてからのあの方向への動きはこういう意味が!と最後にグッと気持ちを持っていかれました。正直観終えた時はああこんなもんか、と思っていつつもその夜とか翌朝とかに思い出しておぉとかあぁとか考えてしまいます。そういう意味では良い映画体験でした。

あとアーサーいいやつ!彼は幸せでいて欲しいです!クライマックスのバーでのシーン、アトロク2での宇多丸解説でより理解が深まりました。